家庭菜園研究家のもぐみん(@agrimichi)です。
家庭菜園初心者向けに、里芋の栽培・育て方の基本をまとめました。
一般的な知識だけでなく、自身の経験から得たノウハウを盛り込んでいるため、初めての方も安心して里芋を育てることが出来る内容になっています。

里芋とは
里芋は特有のぬめりがある、秋から冬にかけてが旬の小芋。
山で穫れる山芋に対し、人里で育てられていたことが名前の由来です。
料理は主に煮物や汁物と相性がよく、とろけるようなきめ細かい食感とコクのある味は絶品。
栄養分は芋類の中で最もカリウムが多く、カロリーも控えめとあってダイエットにもおススメ。
さらにぬめり成分である「ガラタクタン」「マンナン」は、便通をよくする、コレステロール抑制すると言われています。
家庭菜園では水持ちの良い土壌ならあまり手がかからず、ゴロゴロととろける芋を堪能できるのでぜひ育ててほしいところ。

里芋栽培の特徴
科目 | 発芽適温 | 生育適温 | 連作障害 |
サトイモ科 | 15~30℃ | 25~30℃ | あり(4〜5年程あける) |
日当たり | 株間 | 収穫まで | pH(土壌酸度) |
日なた | 約30〜40cm | 約半年 | 5.5~6.5 |
里芋の原産地は熱帯アジアで、高温多湿を好む野菜。
前年穫れた小芋を種芋として植えると大き目の親芋がまず出来、その周りに小芋出来て肥大していきます。
暑さには強いですが冬の寒さに弱く霜がおりると枯れてしまいます。
収穫には半年かかるものの、管理は夏場の水やり程度で良いので初心者にもおススメ。
乾燥にはめっぽう弱いので、晴天が続いたらしっかり水やりするようにしましょう。
堆肥を十分施して水持ちをupさせるのもおススメ。
栽培ポイント
・連作に弱いので気を付ける
・乾燥は大敵
里芋のおすすめ品種一覧
里芋は地方品種が多くあります。どれも育てやすいですですが、初心者は迷ったら石川早生or土垂を選べば間違いないでしょう。
品種によって親芋を食べるもの、小芋だけ食べるもの、親、小芋両方食べれるものがあります。
小芋(と孫芋)を食べる品種
石川早生(いしかわわせ)
ポピュラーな品種で夏終わりごろから収穫できる極早生。小ぶりで柔らかくとろりとした食感。
土垂(どだれ)
里芋の代表的品種で、関東において広く栽培される。栽培しやすく家庭菜園向きなので、初心者が迷ったら土垂で間違いない。粘りが強くねっとりとした食感。
大和早生(やまとわせ)
新潟で古くから栽培されてきた丸芋系品種。肉質は色白できめ細かく、くせが少ない。粘りも程よく、煮崩れしないので幅広い料理に使える。タキイネット通販では里芋内人気№1となっている。
大野里芋
福井県の特産で、小芋がたくさんできる。粘りはほどほどでしまりのある肉質。
親芋と子芋(と孫芋)を食べる品種
八つ頭(ヤツガシラ)
親芋から分かれずほとんど塊になって子芋ができる。粉質でホクホクとした食感。「ずいき」として葉柄も食べることが出来る。
セレベス(赤芽大吉)
出てくる芽が赤い品種。赤芽イモや赤芽大吉とも呼ばれる(厳密には赤芽大吉はセレベス系統ですがセレベスとは味や形が少し違う)。ぬめりが少なくホクホク系で形は大きめ。「ずいき」も食べれる。
タケノコイモ
親芋がタケノコのように地上に出ることから名前がついた。小芋はほとんどできず、主に親芋を収穫。きめ細かい粉質で煮崩れしにくい。
里芋の栽培時期
里芋の地域ごとの栽培スケジュールになります。
里芋の品種によって植え付け、収穫時期が異なるため参考程度にしてください。

種芋の用意
ホームセンターなどで4月~5月初旬(一般地)に種芋を購入しましょう。
種芋は形がふっくらとし、傷みがみられずいきいきとした芽が出たものを選びます。
良品の種芋 細い種芋や枯れている芽の写真
親芋も使える
前年の芋がある場合は、子芋だけでなく、大きな親芋を植え付けても良いです。種芋は大きいほど養分が蓄積され収量が増えるので親芋は家庭菜園にはうってつけ。
芽出しで生育をそろえる
種芋は植え付ける20〜30日前に、あらかじめ芽出ししておくと失敗が減ります。
そのまま植えるとまず欠株(腐ったりで芽が出なくなる)が出ることがありますが、芽出しすればその心配もあまりありません。
芽出し段階で保温管理するので生育も早まりそろいやすく、結果的に収量が上がりやすいです。
ただ、そのまま植え付けても地温と水分を適切に管理出来ていれば問題ないので、事前の芽出しが必須というわけではありません。

畑に畝、あるいは培養土の入ったポリポット、プランターに芽が出ない程度に埋め、ビニールハウスやフィルムをかぶせて保湿&保温栽培します。萌芽適温は23〜25℃で、最低萌芽温度は15℃です。
日当たりの良い場所におき、気温が20℃程あり、適宜水やりをすれば20日ほどで芽が出てきます。
だいたい芽の長さが5㎝程度になり、葉がまだ出来ない程度で植え付けるのがベター。
土づくり(耕し方)【連作は絶対にNG】
里芋は連作に弱いので、必ず昨年とは違う場所で土づくりし植え付けましょう。
2年連作するだけで収量が約2〜3割も減ってしまいます。
まず植え付けの2週間程前に苦土石灰を200g/㎡をまき、しっかりと耕します。里芋は酸性には強い方ですが、石灰の吸収量が多いため必ずしっかりと散布しましょう。
1週間前〜当日、植物性堆肥(バーク堆肥or腐葉土)を1㎡3〜5kg投入し、しっかり混ぜ合わせた後、高さ20cm、幅60〜90cmの畝をつくってください。
土づくりポイント
・堆肥を十分に入れて水持ち、水はけをよくする
・石灰を十分に投入する→生理障害の芽つぶれ症を防ぐ
植え付けと元肥の入れ方
植え付けの株間は30~40cm程あけます。
後に両側から土寄せするので、家庭菜園では60〜90cm幅畝で1条植えがやりやすいでしょう。
幅は15㎝程度、深さは20㎝ほど溝を掘ってください。
溝に堆肥1㎡5握りとようりん50gを均等にまき、10㎝程土をかけます。
種芋の芽を斜め上にして30〜40cm間隔で種芋を置いていきます。
間に化成肥料888を軽く一握り(約30g、1㎡畝で100g程)置きましょう。このとき芋に化成肥料が当たらないようにまとめて置いてください。
最後に10~15㎝程度覆土すれば完了。
土がカラカラに乾燥している場合のみ、水をたっぷりまいてください。
逆さ植え
種芋の芽を逆にし、地面に向けて植える方法です。ぐるっと芽が回って出るので、深い位置に親芋と子芋が出来、土寄せがいらなくなるという方法。土寄せが遅れたことによる青芋が減るらしいので試してみる価値あり。
黒マルチで生育を良くしよう
植え付けた後に黒マルチをかけると肥料持ち、水持ち、地温の確保が出来、初期生育がグンと良くなるのでおススメ。
土が乾燥している場合はしっかりと水をまいて湿らせるか、雨後に張るようにしてください。
芽出しを植えた場合は〇日、そうでない場合は適期なら20日前後で萌芽しテントのようにマルチに芽がはってきます。
遅れると熱で葉が傷むので、早めに芽出ししてやります。
ただし最初の土寄せ&追肥時に邪魔になるので必ず取り外します。
この頃になると気温も十分に上がり、マルチ効果も半減。
一般地や暖地では6月中旬以降も黒マルチを張ったままだと地温が上がりすぎ根痛みして葉先が枯れてくるので、注意して気温が上がり、ある程度生長(本葉6~7枚)になったら除去しましょう。
水やりと敷き藁
里芋は野菜の中でも水分を好み、乾燥が続くと収量が激減します。
梅雨中は、表土が乾くようなら適宜水やりする程度でも構いません。
しかし梅雨明けの真夏は特に乾燥しやすいので、晴天が続くなら最低でも1週間に一回はたっぷりと水やり(1㎡5ℓ以上)してやります。
日中は避け、夕方にたっぷりやるようにしましょう。
ただし一日に水やりは一回にしておいてください。
里芋は土に水分を含みすぎ過湿状態が続くと、生育が悪く、病気にもなりやすくなる側面があるためです。

芽かきをして大きく良い形の芋を
生長にともなって親芋から子芋が出来、その子芋から芽が出てきます。
この芽は早いうちにかきとってやりましょう。
あるいは土寄せの際、踏んで倒して、土に埋めてしまう方法もあります。
ジャガイモと一緒で、芽かきをすれば形の良い大きな芋ができますが、残したままだと子芋は芽に向かって細く太りが悪くなり、小さい孫芋がたくさんなりやすいです。
ただし形や一つの大きさを気にしない方は、芽かきをせず残しておいても問題はありません。
メモ
あえて小芋の芽を10cm以上になるまで置いて根をしっかりつけてかきとり、土にまた挿しておくと小芋が出来きます。
追肥と土寄せ
里芋栽培は、土寄せと肥料を切らさらない追肥が肝。
土寄せがないor少ないと、子芋の芽が伸びて小芋自体の太りが悪くなる&日光が当たると青芋になり美味しくなくなる&小さな孫芋ばかりが出来てしまいます。
ただし土寄せの量が多すぎると出来る芋は細長くなり、量も減ります。
よって3回程にわけて少しづつ土寄せ&追肥していきます。
土寄せの際、小芋から芽(わき芽)が出ていたら芽かきするか、倒して土寄せで埋めてください。
1回目の追肥と土寄せ
本葉が5〜7枚になる5月下旬〜6月中旬(一般地)に50g/㎡(おおよそ一握り)の化成肥料888を追肥します。
葉が出る少し外側の株間にまき、軽く表土混ぜ合わせます。
そして平グワを使い、畝の両側から株元に5㎝ほど土寄せしてあげてください。
メモ
黒マルチ栽培をしている場合は、この時取り除きましょう。そのままにしておくと追肥・土寄せが出来ませんし、6月下旬(一般地・暖地)まで置いておくと地温が上がりすぎて根痛みし葉先が枯れだします。
2回目の追肥と土寄せ
2回目は1回目の追肥&土寄せから約20〜30日後、6月下旬〜7月中旬(一般地)にやります。
同量の化成肥料888を一回目より離れた株間にやり、10cm程土寄せをしましょう。
梅雨空け前までに済ませておくことで、乾燥を防ぎしっかり肥大を促すことが出来ます。
この時、真夏の乾燥に備えてしっかり敷き藁や枯草を畝に引いてください。
3回目の追肥と土寄せ
2回目から20〜30日後、8月中旬に同量の化成肥料888を株から離れた畝肩付近にまいて混ぜ合わしてください。
その後、通路の土を10cm程、株元から畝に土寄せして完了。
メモ
8月中旬、まだ2~3㎝の子芋を軽く手で掘って獲れば、「きぬかつぎ」(皮のまま蒸し向いて食べる)を楽しめます。
収穫時期と方法
気温が下がって葉が枯れ始める晩秋の10月中旬(一般地)が収穫期。
茎を株元から鎌などで刈り取り、遠めからクワでゆっくりと掘り起こしてください。
穫った芋は根をとり、親芋と子芋に分けてやります。(長期保存したい場合はそのまま)
メモ
子芋を食べる品種(石川早生、土垂)の親芋は次の種芋に使っても良いですが、最近では親芋レシピがネットでのっていたりもするのでぜひ食べてみましょう。
少し枯れ始めてからも温かい日があれば肥大を続けているので、一気に穫らずとも構いません。
ただし薄霜が1〜2回降りるくらいまでが収穫の限界時期です。
これを超えてしっかりと霜が降りるほど寒くなると品質を損ね、貯蔵も悪くなってしまいます。

保存
収穫した子芋は、手で折りとって泥がついたまま新聞紙などに包み、段ボールなど通気性の良い箱に入れて常温(7〜12℃)で保存しましょう。
低温(5℃以下)では腐敗しやすく、乾燥にも弱いため冷蔵庫には入れないでください。
メモ
大量に穫れた場合は畑に貯蔵穴を掘って翌年の春まで保存する方法があります。
親株から小芋をとらず、そのまま土を60cmほど掘って株を逆さにして置いて埋めます。
その上からワラを大量にしき、土は山なりになるくらいかけ、ビニールシートなどで雨よけしておきましょう。
土寄せのいらないマルチ栽培について
里芋のマルチ栽培には、前述したように生育前半でマルチを外す方法をお伝えしました。
ここでは、最後までマルチを外さない方法を提案します。
黒マルチではなく、白黒マルチを使用します。冷涼地を除き、中間地や暖地では黒マルチだと気温が上がりすぎて高温障害が出るためです。
基本的には通常栽培と同じ方法ですが、土寄せできないので、覆土は15㎝と深めにしてください。後は土寄せの時期に追肥を株間に穴をあけ、まとめて入れるようにしてください。
マルチをしていると肥料持ちが良いので、2回目の追肥は省いて構いません。
僕もまだ試している段階なので、ぜひみなさんも挑戦されてみてください。
失敗を防ぐ生育診断
水やりしているのに葉が枯れる
里芋は乾燥を嫌うので、水分が少ないと最終的には葉が枯れていく場合もあります。
しかし水やりしても葉が枯れる場合、肥料焼けしていることが考えられます。そのまま追肥をすることなく、潅水を繰り返せばおさまってきます。
また、黒マルチ栽培をすると最近の温暖化で地温が上がりすぎて根が弱り、葉先が焼けたように枯れていくことがあるので取り外し時期に注意。