家庭菜園研究家のもぐみん(@agrimichi)です。
皆さん、苗を買って植える前には畝に大抵は元肥(最初に投入する肥料&堆肥)を入れますよね。
その時、いったいどんな入れ方をしていますか?


僕がこのブログで教えるやり方は「全面施肥」と言って土の表層に肥料や堆肥を混ぜ込むやり方。
他の家庭菜園本でも、全面施肥のやり方を書いてある野菜が多いことでしょう。
実はもう一つよく使われる「溝施肥」という入れ方もあります。
穴を掘って少し深い場所にまとめて肥料&堆肥を入れる方法。
・全面施肥‥畝全体に肥料や堆肥を混ぜ合わせる
・溝施肥‥穴を掘ってまとめて肥料や堆肥を入れる
この二つの元肥の入れ方が、一般的に畑栽培でよく使われます。
ただ初心者にとってこの2つのやり方を知ってしまうと、どちらの方法で元肥をやれば良いか、結構迷うケースがあると思うんですよね。

でしょ?
ということで今回は、元肥の入れ方の基本にあたる2つの「全面施肥」と「溝施肥」の詳しいやり方と、その効果の違いについて紹介していきます。
一般的に言われていることだけでなく、実際に2つの比較栽培もしているので、楽しみに記事を読み進めてくださいませ。

全面施肥とは
畝全体に肥料、堆肥を入れてから種まき、植えつけをする施肥方法。
・はじめからしっかり肥料が効くので初期生長が良い
・堆肥を全体に混ぜれば土全体の保水力・排水性アップも期待できる。
・掘り起こし、埋める手間が省ける
などのメリットがあります。
比較的根が浅く伸びる野菜や、収穫期間の短い葉物、根を収穫するものは全面施肥が適すとされています。
具体的にはキュウリや豆類、種まきから1~2ヵ月で獲れる葉物野菜全般、人参、大根、カブ、ゴボウのなどの根物が挙げられます。
全面施肥の具体的なやり方
小規模の家庭菜園の場合、先に苦土石灰をまいて耕した後、畝を立てます。
そしてそれから1~2週間後、畝を崩さない程度で軽く20cm深ほど表層のみ混ぜ込むやり方がオススメ。
こうすることで効きに無駄がなく、肥料の削減もできます。
投入後は表層をならしてフラットにして完了。
その後は根が深いところに伸びだす約1ヶ月後から、追肥で補えばOK。
溝施肥とは
畝を20cm深ほど掘り、堆肥と肥料をまとめて入れる施肥方法。
・肥料持ちが良く、長く効く
・根が肥料分を探し、太く&深く伸び丈夫になる
・根から離れた箇所にあるため養分過剰で根が痺れにくい
などのメリットがあります。
基本的には長い期間栽培する野菜や、深く根が伸びる野菜に向いた施肥方法だとされています。
具体的にはトマト、ナス、ピーマン、白菜、キャベツ、ブロッコリーなどが挙げられます。
溝施肥の具体的なやり方
全面施肥同様、あらかじめ酸度矯正し耕して畝にしておきましょう。
畝の両側から20cm深ほど掘り返し、堆肥と肥料を入れていきます。
投入したら土をかぶせて、平グワやレーキなどでフラットにすれば完了。
注意ポイント
プランター栽培の場合は全面施肥のみにしましょう。
溝施肥だと根が否応なしに養分の濃い部分にあたってしまい病気や枯れの原因になります。
栽培比較で検証
全面施肥と溝施肥について紹介してきました。
これでお互いの特性や、向いている大まかな野菜がわかったはず。
しかし実際、根が深く伸び、溝施肥が良いとされる野菜でも全面施肥でうまく育てている方もいらっしゃいます。
逆に、どの野菜も根が深く伸びた方が丈夫な野菜が出来る! と溝施肥を推奨されている方がいるのも確か。

少なくとも、元肥(肥料&堆肥)のやり方のみで良く育つかどうかが決まるわけではないのは確かでしょう。
大規模に耕す農業となると「理想の育ち」だけ優先するのではなく散布時の労力軽減を加味し施肥方法を選択します。
家庭菜園においては、ぶっちゃけ規模や好みに合わせながら自分のやりやすい入れ方を選べばOK と言えばそれまで。
しかし実際、家庭菜園レベルでも最初の元肥(肥料&堆肥)のやり方でどこまで育ちに差が出るのかは気になるところ‥
実はどっちにしても、たいして生長は変わらないんじゃ!? なんて疑っちゃったり。


‥ということでこの疑問を払しょくするため
実際に夏野菜を「全面施肥」と「溝施肥」で比較栽培してみました!
実験方法
左が溝施肥、右が全面施肥
ちなみにクワもってるあやしい人はボクですw
今年は実のなる野菜で溝施肥と全面施肥で収穫量を比べてみますよ~
もちろんやる堆肥と肥料は同じ。
たぶん溝施肥の方が多いと予想#家庭菜園 pic.twitter.com/DMGZ04UiDV
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) 2019年5月25日
ナス、ピーマン、トマト、オクラ、マクワウリ、カボチャを溝施肥と全面施肥で比べて観察してみました。
同じ畝で1㎡ごとに分け、各2本苗を植え付け。
堆肥と肥料の量はもちろんどちらも同じに。
ちなみにうちの土は真砂土主体で、基本、黒土や赤土、荒木田土に比べて肥料成分の少ない痩せた土条件です。
結果
はじめに謝っておきます。
実験の全野菜は正直全て撮りきれず、収穫量も測っていません。



はい‥でも観察のみでも、興味深い結果は出ました!
ざっくりと結果をみていきましょう。
全面施肥の方が初期生長が良い
ナス、ピーマン、ゴーヤ、オクラ、マクワウリは「全面施肥」の方が圧倒的に初期生長が良く、実が出来るのも早かったです。
元肥を左写真が全面施肥、右が溝施肥で比較栽培してます🧐
ナスやメロン、ゴーヤも試してますが、俄然、全面施肥の方が育ちが良いです😁
つるぼけしてるとかじゃなく、先に花芽をつかせるのも全面施肥🧐
農家さんや家庭菜園プロの意見を聞きたいので気になったらRTお願いします。#家庭菜園 pic.twitter.com/epV71V2jsW
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) June 27, 2019
家庭菜園プロってそもそもいるのか? というツッコミは置いといて‥。
オクラは顕著に違うのがわかりますね。
同じ堆肥、元肥で左が全面施肥、右が溝施肥です🧐
固体差もあるだろうけど、明らかに全面施肥の生長が良いです😀
今後、溝施肥も根が届けば同じくらいになるのかもしれません🧐
ただスタートアップが良い全面施肥の方が追肥をちょこちょこやる家庭菜園では適しているような気がします😀#家庭菜園 pic.twitter.com/qOAQmdtwRN
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) June 28, 2019
ナスはびっくりするくらい初期生長に差が出て、明らかに全面施肥の方がイキイキと生長してます。
ゴーヤ比較栽培植え付け一か月半。追肥なし。
左が全面施肥、右が溝施肥。
全面施肥が花をたくさん咲かせ始めました。
色合いも全面施肥が鮮やかです。
ここらで比較はおわりかなぁ~ 追肥する時期だし。
こんなに違うとは思いませんでした🧐#家庭菜園#ゴーヤ pic.twitter.com/Qx4O0Z6KOv
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) July 11, 2019
ゴーヤも先に花を咲かせています。
その後は追肥をしたこともあってか、しだいに溝施肥も全面施肥の苗と同じようになっていきました。
トマトに関しては最初からほとんど差がわかりませんでした‥(早々にハダニにやられて後半もわからず)
ちなみに夏場、マルチをしていないカボチャは、炎天下でも全面施肥の方だけ葉の萎れが観られませんでした。
なんだァ~! こりゃ全面施肥の圧勝じゃん~ って思いました?
ところがどっこい。このままでは終わりません。
溝施肥の巻き返し‥!
大きな発見は、生育後半期、オクラ栽培で明らかに溝施肥の方が生長が良かったことです。
右半分が溝施肥、左半分が全面施肥で植えたオクラです。
植え付けてから1ヶ月半までは明らかに左の全面施肥が圧勝の生育だったんですが‥
今になって溝施肥の方が樹勢を保ちながら実をつけていってます。
全面施肥は栄養生長が滞り、花がむき出しになってます。
むむむむ‥#家庭菜園 #オクラ pic.twitter.com/U9PA4PkAmA
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) August 22, 2019
この頃になるともちろん追肥もしているため、溝施肥が要因とは言い切れない部分もありますが、明らかに溝施肥の方が樹勢を保っているのが観てとれます。
興味深い結果が出ました‥!
オクラの比較栽培🧐
写真左の左二つ(右上写真も)が全目施肥、右二つが溝施肥(右下写真も)。
全面施肥は根が浅く細根多しですぐに引き抜けました。
溝施肥は太く深い根があって引き抜くのも一苦労。
こんなに根に差が出るなんて😳#家庭菜園#オクラ#栽培 pic.twitter.com/hLyY5lQx2G
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) September 29, 2019
栽培の終了時に堀り返して根を観てみると、明らかに根の太さ、長さが違うのがわかりました。
圧倒的に溝施肥の方が、根が深く、太い!

考察
さてさて。
今回はさまざまな夏野菜で溝施肥と全面施肥栽培を比べてみました。
トマトは最初から両者つるぼけして良く分からなかったですが、他の夏野菜はどれも全面施肥で初期生長が圧倒的良好な結果に。
この差は単純に溝施肥だと深いところにあるため、植え付けから1ヶ月~2ヵ月経つまでは根が届かず、肥料分が吸えなかったためでしょう。
最初からポットにすぐ当たるくらいの深さに溝施肥すれば、同じような結果が出たのかもしれません。
ただしそれだと溝施肥の深く強く根が伸びるメリットがなくなってしまうような気もします。
まとまった堆肥と一緒に入れるので、いずれにせよ肥料持ちは良くなるのかもしれませんが。
生育後半期は、オクラのみ溝施肥の特性が発揮されたような結果が出ました。
後半の樹勢低下がみられず、終わりまで実の成りがよかったです(肝心の総数は数えてないですが‥)
根が明らかに太かったのもまさにはじめ肥料分が足らず、根を太くしながら養分を求め伸びたことが考えられます。
他の野菜はよくわかりませんでしたが、個体数をもっと多くすれば同じような結果が出たのかもしれません。
まとめ(+実験の感想)
いかがでしたでしょうか。
全面施肥と溝施肥に対し、実際の比較栽培を入れて紹介してきました。
両者に一長一短あり、土の条件や野菜の種類でも結果は異なるので、一概にどちらのやり方が良い! とは言い切れないこともおわかりいただけたと思います。
ただし‥
ここからは完全な私見ですが、少なくともうちの真砂土主体の畑で、植物性堆肥(バーク堆肥)&化成肥料888で元肥をやるならば、全面施肥の方がベターだなと感じました。
なにせ、そっちの方が栽培していて楽しい。
植え付けてから、ぐんぐん生長していち早く実をつけてくれますから(窒素が多すぎるとツルボケしたり病気になりやすいですが)。
かつ、堆肥を十分に畝表層と混ぜているので、保水力・排水性の改善も期待できる。
しかし黒土や粘土質土壌(いわゆる肥沃な土)では、溝施肥にしても初期生長が良く、理想的な元肥のやり方になる可能性もあり得ます。
前述したように野菜の種類のよって向き不向きもあるでしょうし。
緩効性肥料(ゆっくり長く効く)を使うならば、それこそ一発元肥(追肥なし)で相性の良い溝施肥を選ぶのが良かったりするでしょう。
つまり‥どちらを選ぶかはケースバイケース。


どっちを選んでも即失敗には繋がらないですが、もし迷ったときは、冒頭でもお伝えしたようにもぐみん式の表層全面施肥がオススメ。
自身の経験から大抵の野菜で試して問題なく収穫出来ましたし、何より堀り埋める手間が掛からないので。
もちろん毎回違うやり方で結果を比べるのも家庭菜園の醍醐味。
僕も今のやり方に固執せず、どんどん違うやり方にも挑戦していきます。
今後もさまざまな栽培発信をしていくのでお楽しみに!
それではっ。
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